風本真吾の健康談話

とっても怖いアラキドン酸体質

医師はあまり「体質」という用語を用いません。しかし、世間では「体質」という言葉が好まれています。自分の身体の状況を指して、
「疲れやすい体質」「風邪をひきやすい体質」「クマができやすい体質」「寝つきが悪い体質」「お腹がすくと、だるくなる体質」「風呂上がりにめまいがする体質」「血行不良の体質」「冷え性の体質」
などと表現されます。

「病気である」と思えば医師に相談しますが、「病気というほどではない」というときや、生まれた時からの身体の特徴というときに、用いられる言葉のようです。

体質の多くは遺伝的要素を持っています。両親から引き継いだ遺伝子が、自己の身体のタンパク質合成のパターンを形成しますので、遺伝的要素を持っていて当たり前です。特に遺伝的要素が強い場合を、「○○家系」と呼んだりします。
「糖尿病家系」「大腸ガン家系」など、明らかな病気である場合もありますし、
「風邪をひきやすい家系」「早起き家系」など身体や生活の状態を示すこともあります。

さて、食生活からくる体質も重要です。長年の食生活の結果、どのような体質になっているのか。「食生活の欧米化に伴って、○○病が増えてきた」などの表現がありますから、食生活から出来上がる体質は健康上の影響が大きいのです。

長年の食生活で出来上がってしまう怖い体質が、「アラキドン酸体質」です。聞きなれない言葉かもしれませんが、「アラキドン酸体質」はぜひ覚えてほしい健康用語です。
「リノール酸」と言えば、聞いたことがあるかもしれません。菜種油、綿実油、ごま油、ベニバナ油の液体状の食用油に多く含まれる脂肪成分です。そのリノール酸が体内で変換されて、一部がアラキドン酸になるのです。

お腹の脂肪をつまんでみてください。そのつままれた脂肪は、主に自分の食べた脂肪がそのままの姿で身についたものです。
オリーブ油の好きな人には、その主成分である「オレイン酸」が身についています。牛や豚のアブラ、乳製品が好きな人は、「パルミチン酸」「ステアリン酸」「ミリスチン酸」という脂肪成分がついています。
揚げ物や炒め物、まったりとした味わいの料理には大量の植物性脂肪、つまりリノール酸が使用されています。麺類など細長い炭水化物系には、実は大量のアブラが用いられています。その油の主成分はリノール酸です。
脂肪分の多い食生活が続くと、身体にはリノール酸系の脂肪、つまり、変換されたアラキドン酸がたくさんつきます。長年の食事を思い出してみてください。特に、「あの頃、よく体重が増えた」という時期の食生活を思い出すことが大事です。

アラキドン酸は、医薬品と言ってもよいほどの薬理作用を持っています。つまり、医薬品同等の作用成分が、日常の食生活で大量に摂取されているのです。
その薬理作用とは、「血小板凝集促進」「炎症惹起」「痛みの誘発」です。
血小板の凝集が促進されると、血管内で血の塊ができやすくなり、心筋梗塞、脳梗塞が発症しやすくなります。
炎症が惹起される病気で近年増えているのは、皮膚の炎症に関係するアトピー性皮膚炎、気管支の炎症に関係する気管支ぜんそくです。

長年にわたってアラキドン酸の摂取を続けることは、心筋梗塞、脳梗塞、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくなどになるリスクを高めます。
また、最近の研究によって、大腸ガン、前立腺ガン、乳ガン、子宮体ガンの促進物質であることもわかりました。
そんなアラキドン酸の作用を抑えてくれるのが、青魚成分のEPA(エイコサペンタエン酸)であることは、いつもお話ししています。
戦前の日本人の脂肪分摂取量は、全摂取カロリーに対して5%以下でした。つまり、脂肪の成分(種類)を語る以前に、脂肪そのものが少なかったのです。
しかし近年、脂肪摂取量はメキメキと増えました。そして魚食が減ってきました。ですから、今の若者の体質はアラキドン酸化がどんどん進み、危ないのです。
バブル期に豪勢な食生活を誇った世代の人たちも60歳を超えてきました。その人たちもやはり、危ない体質をもっています。

さらに困った話を付け加えます。
アラキドン酸は胎盤を経由して、胎児に移行します。つまり母親がアラキドン酸体質なら、生まれてくる子どももアラキドン酸体質になるということです。食生活から出来上がった体質は子どもにも引き継がれます。小児のアトピー性皮膚炎や小児ぜんそくが増えている理由はここにあるのです。

「アラキドン酸体質」の反対が「EPA体質」です。この二つの用語は、健康管理上ぜひとも覚えておいてください。

EPA体質に関してもっと詳しく

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