「食あたり」と下痢

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風本真吾の健康談話 vol.45

「食あたり」と下痢

「下痢した」が頻繁にある人と、めったにない人がいます。「下痢」というのは、大腸が不調の状態です。具体的には、大腸粘膜から、大腸内腔への水分分泌が異常に高まっている状態です。
下痢といっても、軽いものから重いものまで様々です。腹痛が伴うものもあれば、伴わないものもあります。軽いものでは、朝起きたら、「1回だけ泥状の便が出た」というものでしょう。日ごろ、必ず固形の便をしている人や便秘気味の人は、それだけでも「下痢だ!!」と驚くようです。
重いものでは、有名な病気でコレラというのがあります。大腸からとめどもなく水分が吐き出され、治療しなければ、一晩で、70㎏の体重が40㎏くらいに減ってしまうほどの脱水状態になります。干からびたスルメみたいな身体になり、当然、しっかりと治療しなければ死んでしまいます。
 
朝や夜中に下痢したとき、まず考えるのは、「昨日、何食べたかな?」というものです。確かに、日ごろは下痢をしない人が、突然下痢したようなときは、ほとんどが「食べたものが原因」といえるのです。いわゆる食中毒です。
「昨日、食べたもの」「先ほど食べたもの」で多いのは、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌です。サルモネラ菌は身の回りのどこにでもいます。腸炎ビブリオは海中のどこにでもいますので、生の海産物には必ず付着しています。黄色ブドウ球菌は、人体の皮膚の傷口やあれた皮膚、毛髪などにいますので、これまた身の回りのどこにでもいます。
どこにでもいますから、頻繁に口の中に入ってきますが、ちょっとやそっとでは下痢はしません。大量に入ってきたときのみ、人体に症状を引き起こすのです。つまり、どこかに放置されて大量に増殖した場合に、それを食べたときにのみ下痢症状が出るのです。暖かい夏は、増殖しやすいので油断なりません。
サルモネラ菌は、放置された食べ物で増殖します。卵の中でも増殖しますので、常温で数日以上、放置された卵は要注意です。もちろん肉類も要注意です。
腸炎ビブリオは魚介類には必ずついています。冷凍しないで、そこそこの時間を放置されたら、たいていは増殖していると思うのがいいです。ちなみに、私は、生の魚介類が大好きで、いろいろな料理店で生物を食べますが、時々、この食中毒かな、と思う下痢をします。いちいちその店を訴えたりはしません。
黄色ブドウ球菌は、毒素が熱に強いことが特徴です。加熱しても無効です。とにかく、指に傷があるのに調理するのはいけません。おにぎり、仕出し弁当、生菓子類で放置されたものは要注意です。
 
下痢したときに、原因が思いつかないことがよくあります。加熱したものしか食べていないし・・・、と思ったら大間違いです。加熱すれば大丈夫、と思っている人がたくさんいますが、その沸騰している中で生き残る菌がいるのです。ウェルシュ菌です。だから、シチュー、カレー、煮込み料理、スープも危ないのです。この注意の仕方には特徴があります。
沸騰させて料理して、食べるために取り分けた後、なべの中にその料理が残っているとします。その鍋が、ガスコンロ上で放置されると、温度が徐々に下がっていきます。40~50度くらいのときに、ウェルシュ菌は大増殖するのです。そして、このウェルシュ菌は芽胞というのを作って、100度の沸騰に耐えることができます。ウェルシュ菌が大増殖した料理を再沸騰させて食べたりすると、この食中毒は発生します。加熱した料理でも、油断ならないのですから、怖いものです。なお、ウェルシュ菌は身の回りのどこにでもいます。
煮込んで作った料理はすぐに食べきるか、あるいは、冷凍庫で急速冷凍しなければいけません。

鶏肉を冷蔵庫で放置すると、カンピロバクター菌が増殖します。カンピロバクター菌は熱に弱いので、鶏肉を加熱すれば大丈夫なのですが、冷蔵庫から取り出した鶏肉を包丁で切った後の包丁が要注意です。完全に洗い落とさない限り、その包丁で切った次の料理に付着します。このカンピロバクター菌を摂取すると、5日後くらいに、強い腹痛と下痢が発生します。5日後ですから、もはや「あの時の鶏肉が原因だ」など決めつけることができません。

下痢して病院に行ったとき、医師は原因菌の究明にあまり真剣になりません。たいていは、2~3日で治ってしまうからです。糞便を培養に出して、原因菌を確定させるのに5日くらいかかります。菌が確定したときは、もう治っていて、「だからどうなの?」という結果になるのです。集団食中毒のときは、保健所が中心になって、病院も多少は必死になります。

原因菌の究明といえば、エルシニア菌を思い浮かべます。ペットの糞便にはたいてい大量に潜んでいます。乾燥した糞便は舞い上がりますので、身の回りにエルシニア菌はたくさんいます。また、この菌は生の豚肉にもたいていは潜んでいます。エルシニア菌は、冷蔵庫でも増殖しますし、冷凍しても生き残ります。摂取すると、最長で20日後に、下痢、腹痛(右下腹部中心)、発熱、風邪症状が発生します。つまり、風邪症状と胃腸症状が合併するのです。
「胃腸風邪だね」と言われて終わってしまう病気がありますが、これはたいてい、エルシニア感染症のような気がします。しかし、最近の20日間の食べたものを調査するというのは、現実的ではないですので、「胃腸風邪」ということで、いいかもしれません。

その他に、「ノロウイルスは冬に多くて、嘔吐が中心」「牛肉の表面には、大腸菌O-157が増殖しやすく、表面は焼かなければ危険」などは知ってほしい言葉です。

こんな話をしていると、食べるのが怖くなってきます。しかし、私は悟りを開いています。「あれ?」と思ったときは食直後に抗生剤(ケフレックスまたはタリビッド)を飲むことにして、あまり気にしないで食べるようにしています。

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四谷メディカルクリニック
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院長:風本真吾

略歴

平成元年 慶應義塾大学医学部卒業
2年間研修医を経て同医学部内科大学院へ
平成4年 四谷メディカルサロン(現四谷メディカルクリニック)開設
現在に至る