心房細動

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風本真吾の健康談話 vol.31

心房細動

私が医師になって一年目のことです。ちょうど救急患者の処置にも慣れて、患者を前にして身体が自然に動くようになってきた頃、脳梗塞を発症した患者が搬送されてきました。大きく頑丈そうな身体をしています。時は、平成バブル真っ盛りでした。

患者の意識は混濁しており、大声で呼びかけても「う~、う~」という応答しかありません。右腕、右足は突っ張ったような硬直状態です。瞬間的に、左大脳の頭頂葉を含む広範な脳梗塞であろう、と推測されます。
搬送に付き添って来られた奥さんに聞いたところ、昼前になっても部屋から出てこないので様子を見に行くと、ベッドの上で動けない状態になっていたとのこと。いつもは朝早くに部屋から出てくるそうなので、発症してから4~5時間以上は経ているものと推定されました。年齢は66歳。会社役員で、毎晩遅くまで飲み歩くことも仕事になっているそうです。

モニター心電図をつけたところ、心臓の動きは、通常のリズムを示していました。大きな脳梗塞を発症したら、その直後から脳がむくんで大きくなります(脳浮腫)。狭い空間の頭蓋骨の中で大きくなりますから、頭蓋内圧が高まります。その結果、脳機能が麻痺し、呼吸が止まってしまって死に至ります。だから、治療の始まりは、脳浮腫を防止するための薬剤(グリセオール)の点滴になります。
点滴をしながら、ふつとモニター心電図を見上げると、突然、心房細動のリズムになっています。通常リズムの心電図と心房細動リズムの心電図を見比べてみてください。1回の心拍の間隔が長くなったり短くなったりしているのがわかりますね。これが心房細動です。

正常な心電図と心房細動の心電図

この患者は心房細動の発症を繰り返していたのでしょう。つまり、正常リズムになったり、心房細動リズムになったりを周期的に操り返していたのです。それが原因で脳梗塞を発症したのです。
人間ドックや健康診断は毎年受けていました。心電図も毎年とっていましたが、いつも「異常なし」といわれていました。日ごろは正常リズムで、 時々、あるいは稀に心房細動リズムになっていたのでしょう。健康診断のときは、いつも正常リズムだったのです。本人が自覚症状を訴えることもなかったようです。

この患者は、日ごろ自覚症状を感じることもなく、健康診断でも異常を指摘されず、それでいて心房細動を隠し持っており、それが原因で脳梗塞を発症したのです。
生き延びたとしても、車いす生活はほぼ確実。食事をとるのも困難で、会話さえできないことでしょう。しかし、生き延びさせることが医師の仕事です。

「心臓が原因で脳梗塞を発症する」

これに関して説明しましょう。心臓は血液を循環させるポンプの役割を持っています。1回の心拍で、約70ccの血液を全身に向かって送り出します。1分間に70回の拍動がありますから、その1分で70 ×70=4900cc(約5リットル)の血液を送り出していることになります。
心臓に入ってきた血液は、1回の拍動で、順調にすべて送り出してしまわなければいけません。心臓内で血液がほんの少量でも停滞したり、渦を巻いてよどんだりしてはいけないのです。なぜなら、そのよどんだ部分では、血小板が塊を作ってしまうからです。
この塊を血栓といいます。血栓が、何かの拍子で心臓から送り出されると、体内の臓器内の血管のどこかで詰まってしまいます。脳で詰まると脳梗塞、腎臓で詰まると腎梗塞です。
心房細動を発症すると、心房の中で血液のよどみができます。そこで血栓ができ、徐々に大きくなるので
す。この患者は、心房細動リズムと正常リズムを反復しています。心房細動リズムが治まって正常リズムになった瞬間、心臓内の流れは良くなり、よどみ部分でできた血栓は心臓から送り出されます。この患者の場合は、その血栓が脳動脈に詰まったのです。しかも、もっとも運の悪い場所に詰まりました。

心房細動は自覚することなく、そして、健康診断でも見つからないことがしばしばです。ときどき、自分の手首の脈を触ってみて、「トン、トン、トン」と正常リズムになっているか、「トン、トン、トトン・・・(2秒ほど静止)・・・トトン、トン、卜トン」と不規則に踊っているような心房細動リズムになっていないかをチェックしてみてください。

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四谷メディカルクリニック
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院長:風本真吾

略歴

平成元年 慶應義塾大学医学部卒業
2年間研修医を経て同医学部内科大学院へ
平成4年 四谷メディカルサロン(現四谷メディカルクリニック)開設
現在に至る