風本真吾の健康談話

検査による放射線被ばくとガンの発症率

バリウムを飲む胃の透視検査、肛門からバリウムを投与して大腸内を映し出す注腸造影、PET検査、CT検査、胸部レントゲン検査・・・。医療機関では、放射線を用いた検査が頻繁に行われています。
医療機関にとって、検査による放射線被ばくの弊害を説くことは利益相反となりますので、検査による被ばくの怖さを話すことはありません。それには、余計な不安を持たせたくないという心理も関与しています。

しかし、一方では、腹部症状を訴える女性患者に放射線を用いる検査を行ったところ、実は妊娠初期であることが判明したりして、大慌てすることがまれにあります。そんな場合、たいていは人工妊娠中絶を行います。日ころ検査しているCTやバリウムの造影検査などは、胎児ヘのマイナス影響が非常に大きいことを医師は知っているからです。
それは、「若い女性を見たら、妊娠していると思え」という格言があるほどなのです。

放射線検査など、医療行為上の被ばくは、「医療被ばく」といわれます。これがどれほどの弊害となっているのか、つまり、具体的にどれくらいのガンを余分に発生させているかを調査するのは、非常に困難です。
未来の発症率の話ですから、あくまで推定の域を超えません。しかも、バリウムを用いる検査などの放射線被ばく量は、検査に要した時間に比例しますので、仮にどこかの医療機関が発表していたとしても、1回の検査の被ばく量は、少なく見積
もった数字であるのは間違いありません。

自分の身体が被ばくした放射線量は、ミリシーベルト(msv)という単位で表されます。3000~5000msv1以上の被ばくを瞬時に受けると、数日の命といわれています。
一度に、100msvの被ばくがあれば、年間のガン発症率が0.5%高まるといわれています。この0.5%という数字を聞いて、どのように思うかが問題です。

0.5%の内訳として、自血病は0.05%、胃ガンは0.11%ですので、その二つを例に挙げて、お話してみます。
もともと白血病の年間発症率は、人ロ10万人あたり6人です。放射線被ばくによる10万人に対する0.05%ということは、
50人です。つまり、もともと6人であったのに対して、50人が余分に発症するということになり、56人が発症します。驚くことに10倍近いのです。
もともとの胃ガン発症率は、人ロ10万人あたり53人です。放射線被ばくによる10万人に対する0.11%ということは、110人です。合わせると163人で、3倍を超える発症率になります。100msvの被ばくがいかに怖いかがわかったことと思います。しかし、日常生活において、一度に100msvも被ばくすることは、普通はあり得ません。もちろん医療機関の検査でも、100msvもの被ばくを一度に与えることはありません。医療行為中の何かのミスで、放射線技師が70msvくらいの被ばくを受けたことはあったようです。
検査による被ばく量はというと、一検査に要した時間にもよりますが、バリウム検査、CTなどは、1回の検査でおおよそ10~25msvの被ばくがあるものと思ってください。
福島の原発事故の際の計画的避難地域は、年間合計20msv以上の地域に設定されましたから、それと比較すると、検査による被ばくが思いのほか大きいことがわかります。「検査による被ばくなど、大したことはない」と一方通行的に語る医師には、十分に注意してください。

では、医療検査による被ばくによって、実際にどれくらいのガン患者を作り出しているのでしようか。
オックスフオード大学の研究グループが、先進国15か国を調べて、はじき出したデータが一つの参考になります。
それによると、日本においては、毎年発生するガン罹患者の3・2%が、医療検査による放射線被ばくが原因だと推計されています。つまり、ガン患者30人のうち1人は、検査被ばくにより人為的に発生させられたということになります。
英国とポーランドは0.6%、アメリカは0.9%と、日本だけが飛びぬけて高い数字でした。バリウムを用いた胃透視検査などが普及していること、そして、CT機器の普及率が世界一であること(=1人あたりのCT検査回数がやたらと多い)などが原因と推定されています。

健康不安が強いときにCT検査などを受けた結果、「異常なし」と言われた時はうれしいもので、新たな意欲がみなぎってくるものです。
とはいえ、医療検査による放射線被ばくを軽く見てはいけません。メディカルサロンのプライベートドクターシステムでは、放射線被ばくのことを十分に念頭に置いて、健康を守る指導を行っています。一方で、「毎年、これだけの放射線検査を定期的に行って、あなたの健康を守ります」という人間ドッククラブのようなものもあるので、十分に注意してください。

あなたの健康を守るのは、検査で受けた放射線ではなく、指導を受けて身に着けた知識なのです。経営者は、会社を守るためにたくさんの勉強をしています。それと同じで、健康を守るために、たくさんの勉強はしてほしいと思います。
ここで記した放射線検査の知識は、「基本の『き』」ですから、よく覚えておいてください。

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