風本真吾の健康談話

「食生活は変わっていないはず」に気をつけろ

メディカルサロンを創業した頃、82歳の男性から次のような相談がありました。
「どういうわけか、ここ数ヶ月で体重が2kgほど増えたのです。食生活は変えていないし、思い当たる理由がありません」
そんなことを健康上の悩みにするくらい、その人は自分の身体には神経質な人でした。当時の私は、「たった2kgくらい、まあいいじやないの」
と思ったものですが、あえて関心を持っていろいろ聞いてみました。本人は、食生活は何も変えていないはずと言い張っていましたが、朝から摂取しているものを丁寧に聞きだす私の姿勢に何かを感じたのか、じっくりと考え込みながら、朝からの摂食物を順に並べていきました。

その結果分かったのは、「夜、1杯の牛乳を飲むようにした」ということでした。そして、ちょうどそのころから2kg体重が増えていたということでした。「毎日牛乳を1杯飲む人は平均寿命が長くなる」と何かで聞いたからそうしたとのこと。健康にいいことをしているつもりだったので、その牛乳1杯は体重に関係ないと思い込んでいたのです。重要なのは、最初に「食生
活は何も変えてない」と言い張っていたことです。

さて、半年前から急に血圧が上がってきた人がいました。もともとの血圧は、130/90mmHgくらいでしたが、今は160~170/100mmHgになっています。一般の保険診療では、高血圧の薬を処方されるレベルです。
「食生活の変化はなかったですか?」
と尋ねると、
「何も変わっていません」
との返事です。
そして、次のような話をしてくれました。
「青汁を飲んでいると、少し下がってくるのですが…」

青汁を飲むと、カリウムが多く摂取されます。カリウムをとって血圧が下がるというなら、それはナトリウムの摂りすぎを意味しています。ナトリウム、つまり塩分です。直感的に、毎日2~3gほど塩分が増えているのだと思いました。
「毎日2~3gほど、塩分の摂取量が増えているのだと思います。心当たりはないですか」
と尋ねました。
「絶対に増えていません」
と答えます。

私は昔の「牛乳1杯の出来事」のことを思い出しながら、丁寧に、くどいほど質問を繰り返しました。絶対に塩分摂取量が増えているはずだからです。

「味噌の摂取量は?」から始まり、何でもかんでも聞いていきました。「何も変わってないですよ」と本人は言い張ります。
朝食の内容、昼食の内容、夕食の内容、さらには飲酒時のおつまみの内容など、さまざまに聞き出しますが、なかなか狙っているものが出てきません。そうしているうちに、ひょんなことからついに出てきました。

「朝、朝食前に、梅干しを一個食べています」
「酸っぱい梅干しは塩分の塊ですよ。どれくらいのサイズの梅干しですか?」
「こんなに大きい梅干しです。梅干しは健康にいいと聞いたので…」

手でサイズを示してくれた巨大(?)な梅干しは、1個で、2~3gの塩分を軽く含有していることでしょう。やっと解明されたのです。

「日々の習慣の脳内消去」と言いましょうか、「ルーチン化したことへの想起障害」と言いましょうか、「毎日の摂取物の怖さ」と言いましょうか。「健康にいいと思い込むことの裏恐怖」とでも言いましようか、「たったこれだけ、の油断」とでも言いましょうか。
そういえば、「朝食を抜くと健康に悪い」と思って、無理に朝食をとり続けて、ブクブク太った人も大勢います。

高血圧、音同脂血症、糖尿病、あるいは、糖尿病予備軍を指摘されて一いる人は、日常の当たり前になった「健康にいいはず」を見直してみるのがいいと思います。なお、「糖尿病」や「糖尿病予備軍」と言われている人は、小豆に大量の砂糖を混ぜて作る「あんこ」に十分注意してください。

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