風本真吾の健康談話

尿酸の真実

「急に尿酸値が高くなって、尿酸の薬を飲むようになりましたよ。せっかくダイエットに取り組んだのに」

同窓会の席で、仲間の一人が私にそのように語りかけました。人間ドックを受診したところ「いろいろ異常があるから、体重を落とせ」と担当医に言われたらしく、100kgを超えた体重を一生懸命に食事制限して、10kg以上落としたそうです。

「えっ」
私はその話を聞いて驚きました。ダイエットに取り組んでいる最中では血中の尿酸値が増えるのは当たり前のことで、その場合は、減らした体重が安定してくると尿酸値は自然に低下して落ち着きます。だから、尿酸の薬は不要なのです。
尿酸の薬を内服するようになると、体内の酵素動向が変化するので、薬をやめることが難しくなります。不要な薬を開始させられて、その薬を中止することができなくなるパターンです。私の同窓生は、その罠(?)にはまって、尿酸の薬を延々と飲み続けるハメになったのです。

これらは、完全に健康保険制度の弊害です。おそらく、その医師の頭の中には「数値的に、血中の尿酸値が7.0以上なら、尿酸を下げる薬は健康保険の適応になる」しかなかったのだと思います。
「ビールを飲めば尿酸値は上がる」「レバーを食べれば尿酸値は上がる」などは、医師だけでなく、世間的にも周知されつつあります。しかし、「ダイエットにとりくんで体重を減らしていけば、尿酸値は一時的に上昇する」を知る人はほとんどおらず、医師でさえ知らないことが多いのです。実は、尿酸値に関して深く勉強している医師は稀なのです。その根底には、「たかが尿酸」という思いが医師の心の中に潜んでいます。
さらに、「内科医の仕事は薬を処方すること。食事関連の指導などは仕事ではない」と思っている医師が、いまだにたくさんいます。だから、ダイエット指導さえ的確に行えない医師がたくさんいるのです。

さて、尿酸に関して真実のお話をしましょう。一般の医師は、「尿酸が高いです。このままでは痛風発作が心配です。尿酸の薬を飲んで数値を下げておきましょう」と語ります。それに応じて、尿酸の薬を飲んでいる人が大勢います。
私自身も高尿酸血症ですが、薬は飲んでいません。私の採血結果をみると、尿酸値は通常7.0~8.0mg/dlですが、時には、9.4mg/dlという数値にまで上がったことがあります(カワハギの肝あえ薄造りを大量に食べた翌日)。しかし、薬は不要だと思っているのです。なぜでしょうか?

答えは簡単です。「まだ痛風発作を起こしていないから」です。痛風発作とは、足の親指の付け根やくるぶし、アキレス腱、膝に尿酸の結晶が析出して炎症を引き起こし、強烈な腫れや痛みをもたらす病気のことです。
7.0mg/dl以上だと、その痛風発作が起こる可能性が高まります。実際に痛風発作を起こしている人の尿酸値は、たいていは7.0mg/dl以上になっています。しかし、だからと言って、尿酸値が7.0mg/dl以上だと必ず痛風発作を起こすというわけではありません。7.0mg/dl以上あっても、ほとんどの人は痛風発作を起こさずに生涯を終えてきます。痛風発作は、強烈な痛みを伴いますが、治療すれば数日から1週間で完治し、寿命には影響しません。
たいていは起こらないけれども、稀に起こる人がいる。痛風発作のリスクがあるから、死ぬまで薬を飲み続けなさい、というのが、高尿酸血症の治療の実態です。
ただし、一度発作を起こした人が、その発作を繰り返しやすいのは確かです。また、10mg/dl以上になれば、腎障害など別の病状が生まれます。
だから、私は「自分が痛風発作を一度でも起こしたら、薬を飲むようにしよう。あるいは、10mg/dl以上になれば薬を飲むようにしよう。それまでは、ビールと肝(レバー)をできるだけ控えるようにする」と決断し、尿酸の薬は飲んでいないのです。
ビールとレバーはあくまで、意識の中で控えるようにしているだけで、実はけっこう食べています。たかが痛いだけの痛風発作のために、食べる楽しみを失いたくありません。

では、健康保険の治療適応も、「7.0mg/dl以上ならだれでも投薬OK、にするのではなく、尿酸値が7.0mg/dl以上で、尿酸発作の既往がある人、にすればいいのではないか?」という話も生まれてきます。しかし、そうはならないのが、大人の事情というものです。

国民の健康を守るために、国民から広く資金を集めて、それを運用している最前線が診療現場です。健康保険制度を運用する診療現場は、「最小コストで最大効果」を追及する最前線であってほしいと願っているのが、日本の医師の中では私だけであるようなのが辛いところだな、といつも思っています。

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